今日の一曲(青野賢一):J.S.バッハ “フーガの技法”

今年最初のNEWPORTでのDJプレイは「繊細なもの」を集めてみました。音の緻密な重なり合いや、細かいフレーズに込められた美意識、そうしたところを感じさせる楽曲を、様々なジャンルから選び、紡いでいくことで、巨大な刺繍作品のようなイメージを形作ろうとしたのです。
そうしたセットの中で、重要な位置を占めたのが、J.S.バッハ『フーガの技法』でした。バッハ最晩年における未完の作品であるこの『フーガの技法』は、異なる旋律を同時に組み合わせる「対位法」の名作として、今日まで多くの音楽家により演奏されてきたものですが、そうした細かい話を抜きにしても、絶妙に絡まり、そして離れる旋律は、クラシック音楽にあまり触れる機会のない人々にとっても、聴きやすい作品だと思います。
この『フーガの技法』を中心に、選曲を組み立てていく中で、まず思い浮かんだのが、坂本龍一の『Happy End』という曲でした。YMOのアルバム『BGM』に収録されていたバージョンとは異なる、坂本のソロシングル『Front Line』のB面に収録されていたこちらは、4つの旋律を組み合せ、ダビーに展開していくスリリングなアレンジが秀逸な楽曲です。
クラシック音楽と、それ以外の音楽を結びつけてプレイする、というのはなかなかハードルの高い試みではあるのですが、何か糸口が見つかると、そこからストーリーを紡いでいくことが可能になります。それが上手くいった時の心地よさがあるから、どうにも止められないのです。

(青野賢一)

2月 02, 2012 by Tsurutani
NEW SHIP