今日の一曲(青野賢一):John Cage “Ryoanji”

2012年に入って二回目の「NEWSOUND」は、アンビエントを中心にセレクトしてみました。一般的に想像される「曲」という構造とはやや趣を異にするアンビエントミュージックやノイズ音楽は、ともすると退屈でつまらないもの、というように捉えられてしまいます。そうした音楽を聴くことを目的にしたイベントなどであれば、需要と供給は釣り合うのですが、そうでない場所や会の場合、いかに心地よく聴かせられるかが、肝心なところです。
そんな中で取り組んだ一夜は、Manuel Göttsching「Pluralis」からスタート。John Zornのノイズ、George Harrison『不思議の壁』の中のスパイシーなシタール・アンビエント、坂本龍一と高橋悠治のピアノ連弾曲など、様々な時代、ジャンルから、アンビエント的な音楽をプレイしましたが、セットの比較的前半にかけたのが、John Cage『Ryoanji』です。
1983年の作品『Ryoanji』は、Cageが京都の名刹、大雲山龍安寺に感銘を受けて作られた曲。龍安寺の創建は宝徳二年(1450年)であり、長い歴史を誇るその禅苑には、史跡・特別名勝の方丈庭園があります。この庭園は、白砂(帚で掃いた跡をつけてある)に、15個の石を5箇所に設置したもので、『Ryoanji』は、これを模したように、5つの音符が様々に配置されている曲です。私がプレイしたのは、打楽器と声が組み合わされたバージョンで、幽玄な雰囲気と、ピリッとした緊張感が、場の空気を一変させてくれます(それゆえ、かけるのがなかなか難しい!)。
聴いている方々に、どう響いたかは私の知り得るところではありませんが、これからもいい意味で期待を裏切る選曲をしてゆきたいものです。

青野賢一

2月 28, 2012 by Tsurutani
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