8月最後の「NEWSOUND」は、この季節しか味わえない暑さ、あるいはそこはかとない寂しさなどを表現すべく、普段はあまり連れていかないラテン音楽をレコードバッグに詰め込んで臨みました。ラテンというと、サルサのようにダンサブルなものを想像される方も多いかと思いますが、そこはグッと哀愁を込めて、スローでムーディーなものを中心にセレクト。昔で言うところのイージーリスニングやムードラテンのようなクラシックから、妖艶なKip Hanrahanの新譜といったところまで、年代も幅広く選曲したつもりです。
今回紹介するのは、セットの中盤あたりからラテン比率を高くしていく中でプレイしたJimmy Castor「Our Day Will Come」。2011年にAmy Winehouseがカバーしたこともあり、世代を問わずよく知られるこの曲は、1963年にR & BグループRuby & the Romanticsがシングル盤としてリリースしたものがオリジナルとされています。このタイトル、元々はアイルランド共和国軍のスローガンだそうですが、そうしたポリティカルな文脈というよりは、純然たるラブソングとして歌い継がれているといってよいでしょう。
さて、Jimmy Castorに話題を転じると、この曲が収録されているアルバム『Hey Leroy, Your Mama’s Callin’ You』(1968年)がデビュー作。1972年に結成され「It’s Just Begun」などのヒットチューンを生んだJimmy Castor Bunchのゴリッとしたファンクサウンドからは想像もつかない軽快なラテン~レアグルーヴの名盤です。Jimmy Castor版「Our Day Will Come」は、自身のサックスが奏でる歌メロから始まり、ソフトなボーカルへと移ってゆく構成。ピアノの明るい音色がサックスのアダルトムードを程よく中和しています。温かみのあるモノラル録音は、秋を目の前にしたビーチにも合いそうですね(今年の夏は海に行けなかったな…)。
(青野賢一)