今日の一曲 : Denise Lasalle “Trapped By A Thing Called Love”(『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』より)

ジム・ジャームッシュ監督の4年振りの新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。コアなジャームッシュ・ファンにとっても印象の薄かった前作『リミッツ・オブ・コントロール』に続く作品はジャームッシュによるヴァンパイア映画、という何を期待すべきなのか分からない流れでの鑑賞となったこの新作ですが、正直かなり良かったです。全編を支配するダークなトーンの中にふんだんに盛り込まれたユーモアはいかにもジャームッシュ。そしてこれまでに比べても音楽の占める比重の高い『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は、間違いなく近年の彼のベストではないでしょうか(初期では『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を、中期では『デッドマン』を推します)。

主人公のアダム(トム・ヒドルストン)とイヴ(ティルダ・スウィントン)は吸血鬼のカップル。アダムはデトロイトに住む伝説のミュージシャンで、イヴはモロッコから彼の元を訪れる。荒廃したデトロイトの街を夜中にジャガーに乗ってドライブする二人は、Jack Whiteの生家を廻り、その後アダムがモータウン博物館を見に行こうと誘うが、イヴは「私はスタックス派よ」と言って断る。そのイヴが部屋でアダムと踊る時にかけたレコードが、Denise Lasalleの “Trapped By A Thing Called Love” でした。これはDenise Lasalleがデトロイトのレーベル、Westboundからリリースしたアルバム『Trapped By A Thing Called Love』のタイトル曲で、サウンドは典型的なサザン・ソウル。レーベルはデトロイト(ノーザン・ソウル)なのにどうしてサザン・ソウルかと言えば、録音がメンフィス(イヴの好きなStaxもメンフィスのレーベル)で、プロデュースはAl GreenなどHi Records(これもメンフィスのレーベル)での仕事が有名なWillie Mitchellなのでした。さすがスタックス派のイヴのチョイス。ちなみに、アダムが乗っているジャガーは、かの有名なDJ Rolandoによるデトロイト・テクノ・クラシック “Jaguar” にかけていることと思われます。

残念ながら『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のサントラ盤はリリースされていないようですが、ここ数年ジャームッシュと組んでアルバムを何枚か出しているオランダのリュート奏者、Jozef Van Wissemによるオリジナル・スコアも非常に良かったので勿体ないですね。

UPDATE: 『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のサントラ盤はCDと2LPでAll Tomorrow’s Partiesから2月24日にリリースとなる模様です。

1月 06, 2014 by Tsurutani
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