9月16日(土)のロードムービー・ナイトのためにリサーチしていた中で知った一曲。テレンス・マリック監督の長編第1作となった1973年の映画『地獄の逃避行』(原題:Badlands) のテーマ曲として使われた、カール・オルフ (Carl Orff) の “Gassenhauer” です。
トニー・スコット監督、クエンティン・タランティーノ脚本による『トゥルー・ロマンス』(1993年) がオマージュを捧げていることでも知られ、ロードムービーの傑作の一つとして数えられる『地獄の逃避行』。『トゥルー・ロマンス』は、そのストーリーだけでなく、テーマ曲までもが『地獄の逃避行』へのオマージュなのでした。ハンス・ジマーが手掛けた『トゥルー・ロマンス』のテーマ “You’re So Cool” は、『地獄の逃避行』のテーマ曲に似た雰囲気のものを作って欲しいというトニー・スコットからの依頼を元にジマーが書いた曲。カール・オルフは1930年代から70年代にかけて作品を残したドイツの作曲家で、”Gassenhauer” という曲のことは最近まで知らなかったのですが、もう素晴らしいの一言。マリンバによるメロディーや打楽器のアンサンブルなど、”You’re So Cool” がこれを模していることがよくわかります。ちなみに『地獄の逃避行』では、他にもエリック・サティの “Trois Morceaux En Forme De Poire” が効果的に使われていたり、ミッキー&シルヴィアの “Love Is Strange” やナット・キング・コールの “A Blossom Fell” で主人公のカップルがダンスしたり、音楽の使い方が秀逸。しかし何よりも、映画そのもが傑作の名にふさわしい。衝動的な連続殺人からの逃避行というストーリーでありながら、これほどまでに穏やかで美しく、清々しい余韻を残す作品はテレンス・マリックにしか作り得ないでしょう。