間違いなく2012年の年間ベストのうちの一枚に入るであろうLAのアヴァン・ポップ・アーティスト、Julia Holterのアルバム『Ekstasis』がDominoから12月3日に再リリースとなり、そのアルバムから個人的に一番好きだった “Goddess Eyes II” が12月10日に12インチでリリース。ビデオが公開されました。“I can see you but my eyes are not allowed to cry“ という歌詞がギリシャ悲劇から取られていて、このクリップはその内容から触発されているそうです。悲劇というよりもユーモアたっぷりでいいですね。
それにしてもNicolas Jaarはこれまでのところ何をやってもハズレなし。アルバムとしてはまだ2011年の『Space Is Only Noize』(傑作)しか出していませんが、その後のシングルやリミックスはどれも秀逸で、最近のトレンドとは微妙に距離を置きながらもどこか新しい、独特のスタンスのエレクトロニック・プロデューサーです。Theatre Rooseveltなる名義との連名でSoundcloudで公開された新曲 “The Ego” も、音数の少ないビートとシンセに加工した声ネタが乗ったクセになるトラック。現在フリーダウンロード中です。
Pitchforkの記事で知ったWallという名のロンドンのシンガー・ソングライター。『Magazine』という7インチで今年デビューした彼女ですが、最近発表したKaren Daltonの大名曲 “Something On Your Mind” の削ぎ落とし系カヴァーがとても良いです(フリー・ダウンロードあり)。過去にはSupremesの “Where Did Our Love Go” のカヴァーもやっていて、こちらの削ぎ落とし方もかなり心得ている感じ。WallのSoundcloudで聴けるオリジナルもいいので要チェックです。
Everything But The GirlのTracey Thornが先日リリースしたクリスマス・アルバム『Tinsel And Lights』がとても良くて、最近のヘビーローテーションです。トラディショナルなクリスマス・ソングは1曲だけで、他はJoni MitchellやDolly Parton、最近の曲だとWhite StripesやSufjan Stevensなどのクリスマス/ウィンター・ソングをカバーしてます。そして特筆すべきはTracey Thorn自身によるオリジナル2曲。アルバム冒頭の “Joy” とタイトル曲 “Tinsel And Lights” が本当に素晴らしくて、寒い日に聴くと暖まります。クリスマスを抜きにしても通して聴けるアルバムで、これから毎年重宝しそうです。
“Tinsel And Lights” Track List:
01. Joy [written by Tracey Thorn]
02. Hard Candy Christmas [Dolly Parton cover]
03. Like a Snowman [written by Stephin Merritt]
04. Maybe This Christmas [Ron Sexsmith cover]
05. In the Cold, Cold Night [White Stipes cover]
06. Snow [written by Randy Newman]
07. Snow in Sun [written by Green Gartside of Scritti Politti]
08. Have Yourself a Merry Little Christmas
09. Tinsel and Lights [written by Tracey Thorn]
10. River [Joni Mitchell cover]
11. Taking Down the Tree [ft. Green Gartside] [Low cover]
12. Sister Winter [Sufjan Stevens cover]
Yo La Tengoが2009年の『Popular Songs』以来となるニュー・アルバム『Fade』を来年1月15日にリリース。アルバムからの最初のトラック “Before We Run” が遂に公開です。今回はシカゴでTortoiseのJohn McEntireとレコーディングしたということで、先日の来日公演でも新曲をアコースティック・セットで披露していましたが、これまのYo La Tengoに比べてよりシンプルでミニマルなロックという印象。”Before We Run” はホーン・セクションやストリングスも入っていいですね。とにかく楽しみなアルバムですが、ヴァイナルのデラックス・エディションにはボーナス・7インチが付いていて、なんとTodd Rundgrenの “I Saw The Light” のカヴァーを収録。CDは日本盤が若干先行発売となるようです。
“Fade” Tracklist:
01 “Ohm”
02 “Is That Enough”
03 “Well You Better”
04 “Paddle Forward”
05 “Stupid Things”
06 “I’ll Be Around”
07 “Cornelia And Jane”
08 “Two Trains”
09 “The Point Of It”
10 “Before We Run”
Andy WeatherallがTimothy J Fairplayと組んだ新ユニット、The Asphodellsの初のアルバム『Ruled By Passion, Destroyed By Lust』がとても良くて最近のヘビーローテーション。ウェザオールのこれまでのユニット、Sabres Of ParadiseともTwo Lone Swordsmenとも違うエレクトロニック・サウンドで、ディープかつサイケデリック、そして程よく注入されたインディ感とベテランならではの重厚さが相まって他にはないサウンドになっています。ここ最近のロックンロールなウェザオールとはある意味対極の、上がりそうで上がらないどこかチルなムードがいいですね。”A Love From Outer Space” は80年代のネオ・サイケデリア、A.R. Kaneのカヴァー。アルバムには他にもいい曲多数で、生音のメロディカとギターが入ったメジャー・コードの “The Quiet Dignity Of Unwitnessed Lives” なんて、意外にもPepe Californiaを連想させます。日本盤がなんと約3ヶ月の先行発売中。
11月10日の「ヨ・ラ・テンゴ・ナイト」にお越し頂いた皆様ありがとうございました!結論としては、90年代以降のYo La Tengoのアルバムはどれも良くてかけたい曲があり過ぎて困るということになり、カヴァー曲も含めて4時間たっぷりのイベントとなりました。先日の来日公演でメンバーがおすすめしていたバンド、Antietamは新たな発見。そしてカヴァー曲での新たな発見としては、’98年リリースのEP『Little Honda』のUS盤にだけ入っている “Be Thankful For What You Got”。ご存知William Devaughnのソウル・クラシックで、Massive Attackのヴァージョンも有名ですね。こんなカヴァーをやっていたとは。